ワシントン、2023年2月24日 –世界銀行グループの一角、多数国間投資保証機関(MIGA)は、紛争で荒廃したウクライナの人道、経済活動、復興を支援するための新たな取り組みを開始し、日本政府が基金創設にあたっての第一号拠出を行うことに合意した。本拠出はロシアによるウクライナ侵攻から1年という節目に実施される。
日本からの2,300万ドルの拠出は、MIGAの「ウクライナ復興・経済支援(SURE)信託基金」に対する最初の拠出となる。本ファンドは、追加ドナーからの拠出により3億ドルまでの拡大を見据えており、此れを通し、貿易金融、紛争下での銀行準備金に対する保証、戦後の復興支援に資する政治リスク保険等の提供が可能となる予定。
今般の大規模な危機に対処するためには、ウクライナ政府への無償資金や融資だけでは不十分であり、インフラの再建や経済活動の維持など、危機対応に向けた民間部門の投資を可能にする高レバレッジの支援策の必要性が叫ばれている。途上国へのクロスボーダー投資促進を使命とするMIGAは民間資金動員を支援する最適な立場にある。
貿易金融保証は、ウクライナとの貿易を支援し、医薬品、食料、燃料、肥料などの緊急輸入の継続を確保する。また銀行準備金に対する保証は、金融機関の在ウクライナ拠点における融資拡大を可能にし、経済、特に戦争起因で圧迫されている中小企業にとって不可欠な流動性を支えることになる。また、戦闘が終結し、ウクライナ国内情勢が安定を取り戻した暁には 、運輸、住宅、エネルギーといった重要セクターの復興に向けて金融機関や投資家に対し政治リスク保険を提供する。これらは、ウクライナ経済の再生と現在進行中の人道的危機の終結に必要な再建と復興気運を後押しするものとなる。
「ウクライナ復興・経済支援(SURE)信託基金を始動させる日本の寛大な貢献に感謝申し上げます」と俣野弘MIGA長官は述べた。さらに「MIGAはウクライナで多くの知見を積み上げており、また紛争・脆弱国(FCS)での支援でも豊富な経験があります。この知見を基に、今回の日本からの拠出金と今後の追加ドナー資金を活用することで、紛争下の人道・経済援助を支援するとともに、その後のウクライナ復興に努めて参ります」と語った。
日本の財務省国際局の大江亨開発機関課長は「日本はウクライナと連帯しており、同国への民間投資を促進するこの重要なイニシアチブが開始されることを嬉しく思います」と述べた「MIGAの保証は、戦時中のウクライナの民間セクターの存続と、紛争後の復興に不可欠な民間セクターの活動を支援するという、重要な付加価値をウクライナにもたらすものです。日本は、MIGAの民間資本動員への専門性と、ウクライナ地域や脆弱・紛争諸国における深い知見を高く評価しています。戦争下及び平和回復後のウクライナを支援する保証をMIGAがさらに提供できるよう、他ドナー諸国もこのイニシアチブに参加することを期待しています」とした。
丁度一年前に始まったウクライナにおける戦争は、食糧不安や生活必需品不足をはじめ同国の人道・経済面で多大な影響を及ぼしている。世界銀行の試算では、同国経済が2022年には少なくとも35%縮小した上、新たに800万人が貧困層に加わり、貧困削減目標達成が約15年先送りされたとしており、ウクライナ企業の約半数が操業停止し、残りの半数も生産能力を大幅に下回る状態で操業している。また、貿易は黒海へのアクセス途絶により深刻な状況に陥っている。
多数国間投資保証機関(MIGA)とは
世界銀行グループの一機関として新興途上国への外国からの直接投資を促進する機関として1988年に設立。送金・兌換での制約、政府による契約不履行、収用、戦争及び内乱などのリスク軽減を支援するとともに、金融機関向けに信用補完を提供している。創設以来、MIGAは122の発展途上国において1000を超えるプロジェクトを実施し、700億米ドルの保証を提供。
問い合わせ:
ワシントン:
Elizabeth Howton, (202) 458-5922, ehowton@worldbankgroup.org
東京:
多数国間投資保証機関 東京事務所, miga_tokyo@worldbank.org
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